混沌の時代をどう生き残るのか。色褪せない10年前の就活 2012.12.17

佐々木俊尚の未来地図レポートのアーカイブ Vol.224をお送りします
佐々木俊尚 2022.05.26
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佐々木俊尚現在の視点

 グローバリゼーションの波のなかで、どこに就職し、どのように仕事をしていけばいいのかということを、就活生の若者たちと話しました。もう10年前、2012年のことです。この時に話したことは、いまもそのまま「AIとロボットで仕事を奪われる先に、わたしたちはどうすればいいのか」という議論に当てはまりますね。AIに奪われる単純な仕事ではなく、かといってスーパーマンを目指す困難な道ではなく、第三の道を探しましょう。

これまで2回連載してきた、就活中の6人の学生さんたちとの対話。いよいよ最終回です。今回は「これから仕事をどうすればいいの?」という具体的なところに踏み込んでいます。

イマニシ君:

 今後日本の合計特殊出生率がもっと下がっていき、高齢化社会になると、さらにマーケットが縮小しますよね。そうなった場合に広告だとか出版業界はどういった対策をとればいいのでしょうか?

佐々木:

 そもそも根源的に、広告や出版業界に影響が出るほど人口が減ってしまうような時点にまでいまの広告や出版が維持されるのかということを考えた方がいいと思うよ。そこまで持たないんじゃないかな。

 社会構造そのものが、今後はグローバルプラットフォーム化されていくのは避けられない。日本語や日本語の文化がなくなるわけじゃなく、日本語の本がキンドルストアで流通しているみたいな構造になるんですよ。

 たとえば仕事を探すのにいまはリクナビを使ったり、職安に通ったりしてる。でも将来は、クラウドソーシングとかのプラットフォームがグローバルに普及して、インターネット上で仕事を見つける方が使いやすいじゃないかということになるかもしれません。日本国内の仕事がなくなるわけじゃないけど、その仕事を探すための仕組みがグローバルプラットフォーム化するということが起きてくるんです。

 すべてが、そういった巨大なプラットフォームに飲み込まれていく。日本企業でプラットフォームになれる企業は残念ながら少ないのが現状です。IT分野だと任天堂とか、ソーシャルゲームの企業とか。トヨタや日産といった自動車業界はまだ圧倒的に強いですよね。ただこれも将来的にはわからない。電機では明暗がわかれていて、家電のソニーやパナソニックやシャープはこぼれ落ち始めてるけど、日立や東芝はプラットフォーム戦略をうまく進めている。出版とか新聞・テレビのメディア業界なんかは今のところは外資が入ってこないから生存できてるだけで、もし上陸して来たら勝てない可能性が極めて高い。

 それでももちろん、日本人の仕事は残ります。でも僕は、これからの仕事は三つに分かれていくと考えている。

 まずプラットフォームを作る側のグローバルエリート。でもこの部分は仕事の量は少なくて、少数の人しか入れない。

 一番悲惨なのが、グローバルプラットフォームができることによってはじき出される単純労働者。ホワイトカラーもブルーカラーも、サポートセンターや工場の人員なんかは新興国でやった方が安いので、インド・中国にとられるよね。その先には東南アジアとか、さらにもっと先にはアフリカだって可能性がある。いずれは世界中の給料がほぼフラットになるまで安くなっていくでしょう。

 さらに最近で言うと、ロボットの可能性も出てきている。アップルの製品を作っているフォクスコンという会社は、中国で60〜70万人ぐらい雇ってる。でもしょっちゅうデモが起きて、そのたびにiPadの出荷が止まるようなことも起きている。自殺者が多いという指摘とか、低賃金で搾取してるという批判もある。だったらロボットを使えばいいんじゃないの?ということで、フォクスコンが100万台のロボットを導入する計画を立てているという報道がありました。

 ここまで行くと、ほとんど「ロボットに支配される人間」みたいな手塚治虫のマンガの世界。でもこれが現実になりつつあるんですよ。もしこれが実現してきたら、インドと中国と同じどころか、ロボットと同じ給料になるまで下がらざるを得ないということになっちゃう。そうなるとロボットと同じ給料でやる人間はいなくなるだろうから、全員が飲食とかのサービス業に集中していき、ますますそこの給料が安くなるっていう構造になっていくんじゃないかな。

 だからみなさんはそこに入らないように、必死に努力しないといけない。かと言ってプラットフォームを作れる側に回れるのはごく一握り。

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