「コロナ後」とテクノロジー(1)フローからストックへ、投資から貯蓄へ

佐々木俊尚の未来地図レポートのアーカイブ Vol.630をお送りします
佐々木俊尚 2022.09.22
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佐々木俊尚現在の視点

コロナ後の社会の変化について、「フローからストックへの回帰」「都市の地方化と地方の都市化」「社会距離とテクノロジー」という三つの視点で語っています。コロナで緊急事態宣言が出ていた真っ最中の内容ですが、この見通しは3年経った今も変わらないのではないでしょうか。

リアルタイム物流は終わり、ストックの時代が再びやってくるのだろうか 〜〜「コロナ後のライフスタイルとテクノロジー」経済倶楽部講演から(前編)

コロナ禍第一波の最中6月5日に、東洋経済新報社で開かれている「経済倶楽部」に招かれて講演をしてきました。

 経済倶楽部というのはいまは一般社団法人になっていますが、実は非常に歴史が長い団体です。設立されたのはなんと1931年(昭和6)! 90年近い歴史があるのですね。創立の中心となったのは、後に首相もつとめた当時の東洋経済新報社主幹の石橋湛山。この経済倶楽部で講演するというのは、なにか日本近代史に手で触れてる感があります(笑。

 わたしはここで講演するのは2回目なのですが、戦前の初回から数えるとなんと「4333回目」。すごすぎます。コロナ禍の最中ということで、無観客で動画撮影というスタイルでした。今回から3回ほどにわけて、「ポストコロナ時代のライフスタイルとテクノロジー」という演題でお話したこの講演の内容をお届けしたいと思います。

 では、ここからスタートです。


 5年ぶりにこの経済倶楽部でのお話をいただいたとき、当初、人工知能とかAIの話でもしようかなと思っていました。けれども、そのさなかにこのコロナ騒ぎが起きて、たぶん、ここで何かいろんなリセットというか切り替えみたいなことが必然的に起きるであろうと。そうすると、AIの話はもちろんそれはそれで進んでいくけれども、一方で、これがどういう影響を与えてどういう効果をもたらすのかということをもう少し踏み込んで考えてみたいとおもっています。

 この2カ月の間、ずっとコロナ後の世界の問題についていろいろ考えていました。しかし、なかなかまだ整理し切れないところがあります。けれども、現段階で考えたことが幾つかポイントとして出てきているので、その辺のお話を今日はしてみたいと思います。この話話すのは今日が初めてなので、本邦初公開です。

 三つのテーマを考えています。一つはフローからストックへの回帰、二つ目は都市の地方化と地方の都市化、三つ目が社会距離とテクノロジーです。これを一つずつ順繰りに説明していきたいと思います。

 まず、フローからストックというのは何か。今回のコロナ下で仕事がほとんどなくなってしまう、たとえば個人事業主とかアルバイトで生きている人だと、もう目の前の収入が消滅してしまったケースは結構多く、実際京都の観光業、旅館とかホテルは、この前京都新聞に記事が出ていましたが、昨年5月と比べて今年の5月がどうだったかというと、100%減少が30%ぐらい。100%減少とは、要するにゼロになったということです。90%減少も30%ぐらいあるので、合わせて6割以上の旅館やホテル、観光業関係の仕事が9割以上消滅している。そういう恐ろしい事態になってきているわけです。

 ここで重要なのは、やっぱり手元資金だったという話が起きてきている。内部留保に関して、ずっとここ10年ぐらい日本企業は内部留保を貯め込み過ぎだ、もっと吐き出させよう、内部でおカネを持っていてもそれが回らなければ経済が浮揚しないと言われ続けてきた。

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