「過激な人」にならないための情報収集術
佐々木俊尚現在の視点
私の今年の新著『読む力 最新スキル大全』でも解説していますが、RSSを使った情報収集の方法をあらためてここでくわしく紹介しています。RSSは最近は「オワコン」とも言われてる古いツールなのですが、SNS全盛の今だからこそ使いたい有能な「武器」だと思います。
「極端な人」にならないための情報収集はぜひRSSフィードで〜〜偏りがなく奥深い情報を読むためのたったひとつの方法(第6回)
わたしが常々おすすめしている情報のとりかたはRSSを活用することです。RSS(リッチ・サイト・サマリー)はアール・エス・エスと発音し、ウェブサイトの記事の見出しや要約のデータフォーマットのこと。多くのウェブサイトはこのRSSのデータを外部に配信していて、RSSリーダーという専用のアプリをつかうと、各サイトが配信しているRSSを集めることができるのです。
わかりやすく言い換えれば、RSSリーダーを使うことで、ニュースサイトやブログなどの新着の記事の見出しをまとめて閲覧することができるようになるということです。
RSSは非常に便利でわたしは好きなのだけれど、残念ながらウェブの世界では「RSSはもうオワコン」などと言われています。もう終わってしまった、廃れた技術であると。実際、グーグルやドワンゴが提供していた人気のRSSリーダーは2010年代なかばに終了してしまっていますね。理由はいろいろあるけれども、いちばん大きいのは、インターネットの情報が爆発的に増えてしまったからでしょう。RSSリーダーは指定したウェブサイトの新着記事の見出しをすべて拾ってきてくれる便利なアプリなのだけれど、サイトの数が爆発的に増えると、RSSリーダーに登録するだけでもたいへんだし、流れてくる見出しの数もものすごく多くなるからです。
わたしも2010年代に入るころには登録サイト数が千数百にも達してしまい、1日に流れてくる見出しの数が2千や3千にもなって、情報の海にほとんど溺れかけたことがありました。これだけの量の情報をさばこうとすると、1日何時間もかかってしまい、他の仕事ができなくなってしまいます。わたしは情報やメディアの分野を手がけているジャーナリストなのでそれでも処理しまくっていましたが、ふつうの人にはそんな暇があるわけないですね。
その後わたしは登録サイト数をかなり絞り込み、いまは400ぐらいで落ち着いています。それでも1日に千ぐらいの見出しは流れてきます。これを処理するために、駅で電車を待っているときやタクシーに乗っているとき、ミーティングの待ち時間、エレベーターやエスカレーターを乗っているときなど、ありとあらゆるスキマ時間を活用して見出しをチェックしています。
そんな苦労をしてまで、なぜ「オワコン」と言われているRSSリーダーを使い続けているか。それは端的に言えば、RSSリーダーの情報収集がフラットで公平で、偏りがないからです。
ただし、どんなニュースサイトやブログを選ぶかによって偏りは生じます。しかしその偏りは、自明です。自明であるというのはどういうことかというと、「自分でそのニュースサイトを選んだのだから、そのニュースサイトに偏りがあることは認識している」ということです。偏りがあっても、自分が偏りを認識しているのであれば問題は大きくはありません。