データジャーナリズムという新潮流が日本では盛り上がらない理由
佐々木俊尚現在の視点
AIの爆発的な進化で、膨大なデータを処理することの重要性があらためて認識されています。ジャーナリズムの世界でも、2000年代終わりごろから「データを分析するジャーナリズム」、すなわちデータジャーナリズムという分野が広まりはじめました。これは2010年というその最初期にデータジャーナリズムについて詳細に解説した内容です。
マスメディアとネットはどう補完しあえるのか?(後編)
データジャーナリズムという言葉が最近、英語圏のネットメディアで急浮上しています。ガーディアン紙のブログに書かれた「データジャーナリストになる方法」という記事がわかりやすくまとめているので、この記事を導線にしながら説明していきましょう。この記事の筆者ポール・ブラッドショー(Paul Bradshaw)は、「データジャーナリズムのトレーナー」と紹介されています。
■How to be a data journalist(英語)
http://www.guardian.co.uk/news/datablog/2010/oct/01/data-journalism-how-to-guide
データジャーナリズムは、政府などが持っている膨大な量の統計資料などのデータを分析し、それらをわかりやすく可視化していくというジャーナリズムです。これは調査報道手法から、デザインやプログラミングまでをも含む非常に広い分野の手法を統合させて、そこにひとつの重要な物語を紡いでいくというアプローチです。
次のようなプロセスから成り立っています。
(1)データを見つける
どこにどんなデータがあるのか、それらが参照可能なのかを調べるスキルが必要です。また同時に、MySQLやPythonなどのデータベース言語についての技術的知識が必要?になる場合もあります。
(2)データの意味を分析する
そのデータがどのような意味を持ち、どのようなコンテキストの中に位置しているのかを判断しなければなりません。スプレッドシートを睨んで分析する思考力が必要です。
(3)データをビジュアライズする
かつてはデータの可視化はデザイナーやプログラマーの仕事だと思われていましたが、いまやこのビジュアライズもデータジャーナリズムにとって重要な要素を占めるようになっています。
(4)データをマッシュ(混合)する
Yahoo PipesやManyEyesなどさまざまなウェブのマッシュアップツールを駆使すれば、複数のデータを混ぜ合わせて相対的に表示し、新たな意味を見いだすことが可能になります。
データジャーナリズムにおいても、やるべきことは普通のジャーナリズムと変わりありません。何かのできごとを取材し、そこからどのような物語を拾い上げるのかがジャーナリズムの仕事だとすれば、データジャーナリズムも同様に「データを調べて、そこから何らかの物語を抽出する」という行為を行っていくということです。