いつの日かビットコインは貨幣になるのか?
〜〜「レイヤー化する世界」と国民国家の衰退からみる仮想通貨の可能性 2014.3.10
佐々木俊尚現在の視点
ブロックチェーンが「ウェブ3」という流行語とともにまた盛り上がっていますね。私はこの技術には注目していますが、投機的かつ山師的な動きばかりが目立つ界隈の異常な熱狂には、ちょっとどうかな……と感じています。ブロックチェーンについてはもう少し長期的な視点が必要でしょう。
そもそも振り返れば、ビットコインが「仮想通貨」と呼ばれたところから問題は始まっていたのかもしれません。今は「暗号資産」と呼び変えられるようになっていますね。果たしてビットコインが通貨になり得るのか?という最初の問題提起をしたのが、この記事です。
いつの日かビットコインは貨幣になるのか?
仮想通貨ビットコインについて、今回はその可能性を論じてみましょう。
ビットコインは今のところは貨幣というよりは、どちらかといえば買い物に使う「ポイント」に近い存在でしょうね。たとえばTSUTAYAのTポイントは日本国内ではたいへん普及していて、さまざまな提携先のショップで金券のように買い物に利用することができます。ビットコインはこのポイントをさらに進化させ、国をまたいでかんたんに送金したり、実在する専用ATM(現金自動預払機)を使ってドルなどに出金することもできるようになっているというようなものです。
ビットコインはネット上にP2Pを使って暗号化されたシステムを構築し、このシステムにソフトウェアを使ってアクセスすると、金銀を採掘するのと同じように少しずつビットコインのデータを取り出せるようになっています。
この採掘ソフトウェアが動く仕組みは、こうです。ビットコインのすべての取引は、P2Pで分散されたサーバ上に保管されています。このすべての取引がきちんと矛盾なく行われていることを検証する方法として、巨大な計算量が必要な数学的な問題を解くことが求められます。この問題を解けば解くほど、取引がさらに強く検証されることになり、これによってビットコイン自体の信頼度がさらに高まっていくという仕掛けになっているんですね。
そしてこの「採掘」は、一度に大量のビットコインを取り出すことはできません。また採掘量にも限界があり、埋蔵されているのは上限2100万ビットコインで、今のところ1200万ビットコインが掘り出されています。
一定の日時の間には少しずつしか取り出せないため、希少なゴールドを採掘するのと同じように、希少価値をうみだす要因になっているわけです。話題にならない初期のころはソフトを使えば個人でもたくさん取り出せたようですが、いまは世界中の多くの人が採掘しようとしているため、ひとりあたりの採掘量はたいへん少なくなっています。現段階では個人がパソコンを使って採掘しても、そのパソコン投資の価値に見合うだけの採掘量にはならないようです。
さて気になるのは、このビットコインは通貨の代替物になり得るのだろうか?という深遠なテーマ。